売主から売却物件を預かるための「査定業務」1.査定対象の特定(地図・謄本などの資料収集)
謄本の収集の仕方
- ブルーマップや法務局の地番紹介サービスを利用して地番・家屋番号を調べます。
- 法務局のシステムなどで登記情報を取得します。
この時、共同担保目録は必ず有にしましょう。
- 土地戸建の場合、公図・地積測量図・建物図面もなるべく取得します。
- 私道があるようでしたら私道の登記情報も取得します。持分があるかどうかが重要になります。
- 謄本を取得したら、表題部(地目・地積、建物用途・床面積など)、権利部甲区(所有者情報)だけでなく、権利部乙区も確認するようにしましょう。
抵当権の設定額や差押の有無、地役権の有無などの記載を確認する必要があります。
売買仲介の業務の仕組み:査定業務 2.相場の確認(公示地価の確認)
相場情報について
1.公示地価・基準地価
毎年1/1・7/1時点の土地価格として特定の公示地・基準地の価格を公表しています。
対象地の近くにある公示地・基準地の価格は地域相場として参考になります。
2.相続税路線価
毎年公表される路線(道路)ごとの土地価格で、その路線に面する土地の相続税評価に用います。価格水準は公示地価・基準地価の8割程度とされています。対象地の前面道路の評価額が得られるのでより具体的なイメージがつきます。
「路線価÷0.8」で概算土地価格として利用することもあります。
3.固定資産税路線価
相続税路線価が振られていない私道に面する土地や、倍率地域の土地を査定するときは、固定資産税路線価が参考になります。
3年に1度更新されるもので、価格水準は公示地価・基準地価の7割程度とされています。
※地域によっては上記の公的な相場価格と実際の取引価格が倍ほど乖離するケースもありますので注意してください。
相場情報を確認する方法
全国地価マップで全て確認することができます。
ただし更新が遅い場合があるので、最新情報を取得する際は公示地価・基準地価は国土交通省、相続税路線価は国税庁、固定資産税路線価は各市町村のHPなどを確認するようにしましょう。
売買仲介の業務の仕組み:査定業務 3.成約・売出事例の確認(基本的な考え方)
公示地価で大まかな相場を確認した後は、物件周辺の成約・売出事例の価格を出し、比較しながら物件の査定の価格を決めていきます。成約事例と売出事例の違いを見ていきましょう。
成約事例
レインズやat BBなどで検索します。自社の取引事例を使う場合もあります。
成約事例は査定において最も強力な根拠資料ですが、通常不動産会社しか取得できません。
したがってお客様に提示して最も喜ばれる、そしてプロとしての権威性を示せる資料になります。
売出事例
同じくレインズやat BBなどで検索します。
ただし、これらの情報よりもSUUMOなどのポータルサイトの方が掲載が早い場合があるため、細かく調査する際はポータルも確認しましょう。
さらに、築浅のマンションを査定する際は周辺の新築マンションの価格もウォッチすると良いでしょう。 売出事例はまだ成約に至っていないので原則として査定には用いません。
ただし、売出事例はポータルサイトなどでお客様自身が見ている可能性が高く、お客様の中では「あの物件が〇〇万円ならうちは…」と想定されていることも良くあります。
成約だけをみて査定書を作るとお客様の気持ちと乖離するリスクがあるので、査定の際には売出中の物件も必ず見るようにしましょう。
成約と売出は下記のような使い分けが良いでしょう。
成約事例・・・査定価格の算出に利用
売出事例・・・売出提案価格の決定に利用
次回の記事では査定価格の決定と提出資料についてを解説していきます。