精度の高い査定をする上で「成約事例をいかに効果的に使えるか?」がカギを握ります。
成約事例からどのように査定価格を導き出すのか、解説します。
査定で最も重要なのは「事例の選択」です。
選ぶ事例によって価格が変わるのはもちろんですが、お客様への説明の質も変わりますし、信頼を得られるかどうかも変わってきます。ではどのような事例を選ぶのが良いのでしょうか?
最も良い事例は【今日成約した、対象と似ている隣の土地】です。これを紐解くと事例を選ぶ視点が見えてきます。
さらに、不動産の取引価格には当事者の事情が多分に影響していることを理解する必要があります。
例えば、売り急いでいる売主の物件は指値交渉が大きかったり、反対に買い進みの事情により高い成約があるなどです。
これらを鑑みると、1件の成約事例から査定を出すのは危険です。複数件の事例で説明するように心がけましょう。
売出価格を提案する際、ご機嫌をとりにとんでもない高値を提案してしまうと販売も長期化し、売主様・仲介会社ともに不幸です。
査定価格、売出中の競合物件などを比較して適切な売出価格を提案しましょう。
売出提案価格を決める際のポイント
売出価格を提案する際も、どのようにその金額を決めたのかを示すことが重要です。
周辺の売出事例を提示して決定の経緯を説明できるようにしましょう。
ピックアップしてきた事例を査定価格に落とし込むために、事例の補正が必要になります。補正値の考え方や使い方を解説します。
例えばマンションの成約事例を5件選んだとします。
この5件が全て同じマンション内の事例だとしても、対象が20階の住戸であるのに対して事例が1〜10階の5件だったとき、これらの平均値を査定として使うと安くなりそうですね。
1階の価格は1.2倍すると20階相当の価格になる、2階なら1.18倍…といった階数補正を行った上でそれらの平均を使うと20階の正しい価格が求められそうです。
このように、各事例の条件を対象の条件に揃えた上で査定を行う必要があり、この作業で使う1.2倍や1.18倍という数値が補正値です。
マンションの補正は他にも、所在補正値、駅距離補正、角部屋補正、ルーフバルコニー補正などが必要になります。
土地の補正としては、所在補正値、道路幅員補正、形状補正、容積率補正などが必要です。
補正は難しい作業ですが、プロとしての腕の見せ所ですので是非こだわってください。
補正値は客観的な数値であることが望ましいです。階数補正も感覚的に1.2と決めるのではなく、新築時の価格表を取得して新築坪単価比率を用いて出すといった手法を用いるべきです。
土地の所在補正では、路線価比率を用いるのが簡単です。道路幅員補正や容積率補正などは難しいところなので、地価公示の鑑定評価書などを参考にしてつけると良いでしょう。
査定パート以外にも、売主さんに査定価格に納得してもらうための付帯資料が必要です。具体的にどのような資料が必要で、どういう記述をするべきなのでしょうか?
査定資料で大事なことは査定の内容をわかりやすく伝えることです。
中には査定書のボリュームで勝負しようと不要な資料をたくさん添付する会社もありますが、
査定の経緯を順序立てて説明ができないので、非常に読みにくい資料になってしまいます。
必要な資料をあるべき順番で提示することが大事です。
なぜ媒介を取り逃がすのか、「売主に査定価格の根拠が説明できていないこと、そのため売主の信頼を得られていないこと」が、失注に繋がっている可能性が非常に高いです。
と言いますのも、弊社サービスのユーザーを観測しますと、現代の売主は匿名のAI査定のサイトなどで無料で自分の物件の売却相場を事前に調べていることが多く、
「だいたいこのくらいの価格で売れそうなのはイメージができているが、不動産業者にプロの知見から意見や査定の根拠を情報提供してもらい自信を持って売却価格を設定したい」というスタンスの方が増えているからです。
1年目から正しい営業スタンスを身につけると、後の営業成績の伸びが違います。売主さんの信頼を得るため、信頼感のある査定から始めてみましょう。
売主の信頼を得られない原因は「査定価格」の説明の不足にある。1年目でも顧客から見れば「プロ」。しっかりとした査定書を作り、自信を持って価格根拠を説明できるようになりましょう。