K:さて、ついにやってきました、僕の番。Sさんは業界経験もあるから、かなり突っ込んだ質問が出来ますが、僕の場合は「めちゃくちゃ初歩的なこと」を聞いてしまいますよ。先生、怒らないでくださいね!
横山:笑 全然ウェルカムです。不動産仲介会社さんの中にも実は初歩的なことがわかっていない方もいますからね。
K:そうなんですか?!不動産仲介さんってプロの中のプロかと思ってました!
横山:あ、勘違いしないでほしいのは、プロなんですよ。ただ査定のプロではなくて、不動産契約実務のプロなんです。
K:なるほど〜、なんかよくわからないですが、さっそく質問に移りますね。
横山:(よくわからないんかい・・・)
K:そもそもなんですが査定根拠がない査定書なんてあるんですか?
横山:・・・え?
K:いや、AI査定プロって査定根拠の説明がしやすい査定書作成システムじゃないですか。でもエンドユーザーからすると、査定をしているということは何かしらの根拠があって価格を出しているもんだと思っていて。当たり前のことを言ってるんじゃないかな〜って入社したときから思ってたんです。
横山:なるほど。まったくわかってなさすぎてイラッとしてしまいましたが、そういう経緯なら合点がいく質問ですね。
K:(イライラしてたんだ・・・先生こわい・・)
横山:まず質問にお答えすると、査定根拠を示していない査定書は巷に溢れかえっています。
元々はどの不動産仲介会社さんも価格の根拠を持って査定をしたり説明をしていました。それこそKさんが言っているように、周辺の事例を比較したり、今から作るとしたら原価はいくらだ〜と計算したり、やり方は色々あれど根拠を持って査定をしていました。
しかし、時代は流れ、簡単に価格が出るというツールが出回り始めました。2時間以上かけて査定していたのが1分で出せるようになったんです。
K:なるほど!2時間が1分じゃ、飛びつきますよね。導入事例インタビューでも聞きましたが、営業マンってとにかく業務が多くて忙しいですもんね。
横山:そうなんです、それで大半の会社さんがそういうツールに飛びついたんです。
AI査定プロもそうですが、物件情報をシステムに入力して査定を開始するというだけで、AIがぽんと価格を出してくれます。これでだいぶ業務効率は改善されてめでたしめでたし・・・とはならずに困ったことが起きるようになったんです。
K:話し方うまいですね、なんか気になる。その困ったこととは何だったんですか?
横山:査定根拠をお客さんに説明できなくなるということです。
K:それはなぜですか?
横山:実は、そのような便利ツールですが、AI査定価格と事例との関連性が特にないケースがほとんどなんです。
K:どういうことですか?根拠っぽい事例が並んでいるだけということですか?
横山:少なくとも私が仲介会社時代に確認しただけでも多くのツールがそうなっていますね。ようは価格を出しているAIがブラックボックスになっていて開示できない、しかし事例っぽいものは出さなければいけない。そこで周辺の売出し事例をそれっぽく適当に並べるという方法を取ったということです。
K:なんでブラックボックスになっているんですか?根拠の説明が必要なら開示してしまえばいいのに。
横山:それが開示できない事情があるんです。主に2つ理由があります。
1つは膨大かつ無数のロジックがAIの中で動いていて、もはやAIを作った人でもなぜその価格をAIが出したか説明できないケースです。
もう1つは簡易的な査定ロジックだと適当に価格を算出していることがバレるからです。
K:なるほど〜、まとめると業務効率改善やテクノロジーの進化という時代の流れも手伝って便利ツールが流行った、しかしそれによって査定根拠の説明をすることが難しくなったということですね。
そもそもの話なんですが、根拠の説明ができないと何が問題なんですか?
横山:営業の現場ではお客さんに50%以上の確率で聞かれます。そのときに答えられないことでプロとしての信頼感がない、結果的に媒介を取り逃したり一般媒介になってしまったりします。
平たく言うと「この人で大丈夫かな」とお客さんは不安になるんですよね。
K:ああ、それめちゃくちゃわかりますね。僕も去年家を売ったとき、価格の根拠の説明ができない営業マンはまっさきに切りました。
自分の大事な資産を預けて、できるだけ高く売ってほしいときに、なぜその価格かが説明できないって羅針盤もなく売却活動をやっていくようなものですから。シンプルにこの人仕事できない人だな、と思った記憶があります。
横山:そうなんです、それが営業マンにとっての最大の問題だと思います。
また別の角度から話すと、宅建業法の中で「顧客に金額を提示するときは根拠を示さなければならない」という規定があるんです。解釈の問題なので人それぞれ考え方があるとは思いますが、価格と事例がひもづいていない便利ツールを使って根拠の説明が出来ない状況は、その責務を果たしていないのではないか、とも考えています。
査定価格ってこれから売却活動をするにあたって、とても大事な価格であり、適当にやることによって損するお客さんが出てくるかもしれない。そのような業務に真摯に向き合ってない、と感じる場面が多々あり、現状をどうにかしたいという思いがあります。
K:先生、急にアツくなりましたね。どちらにせよ、根拠の説明ができないことが営業マンに与えるマイナスは、ノルマ未達や失注に繋がっているとわかって末恐ろしくなりました。
ちなみに、AI査定プロはなぜ査定根拠の説明がしやすいシステムだと言えるのでしょうか?難しいことはわからないので、簡潔にお答えください。
横山:(簡潔に、って・・・)AI査定プロは、価格算出にAIを使っているわけではなく、価格算出に使う事例との補正値算出にAIを使っているシステムだからです。
例えば「この事例と比べてお客様の物件は駅から遠いため90%の補正がついています(つまり安い)」といった具合に、営業現場でお客さんに説明するシーンを徹底的に想定して作り込んでいます。そのため、査定根拠の説明がしやすいシステムなのです。
K:最後に良い感じのドヤ顔ありがとうございました!
次回はそもそも補正値って何?ってところから聞いていきたいと思います、嫌にならずによろしくお願いします!
横山:もうこうなったらとことん付き合いますよ、よろしくお願いします。