S:横山さん聞いてください。今、私も注文住宅を考えてみようかとたまに大手のポータルサイトで土地の売買情報を見ているんですけどね、この間、すごく良いと思っていた土地が手頃な価格で売っていたんですよ。
あまりにも周辺の相場と比べても手頃なので、情報をじっくり見ていると備考のところに「都市計画道路予定あり」と書いてありまして。都市計画道路の予定があるとどのように査定業務をしていくのか気になってテーマにいたしました。不動産仲介の実務的には、どのようなことに留意して査定するべきなのでしょうか?
横山:まずはインターネットで用途地域を調べるのと、役所に行ってその都市計画の内容を調べます。その内容によって査定の仕方は変わってきますね。大きく分けると以下の4つのフェーズです。兵庫県西宮市のウェブサイト「にしのみやWebGIS」を例に説明します。
兵庫県西宮市のウェブサイト「にしのみやWebGIS」より
まず、「計画決定」の段階ですが、昭和の戦後高度経済成長期に計画されたものが多く、そこから長い時間が経過していて、多くの建物がすでにその土地に建ってしまっているのもあり、実現する可能性も比較的低い計画も多いですね。都市計画法53条に定義されているので、「53条制限」ともいわれます。
ただし、晴天の霹靂のように急に事業決定する場合もあるので、計画経過への注意と売主・買主側への丁寧なリスクの説明が必要です。
自治体によっては、計画から事業化の可能性を聞けたり、廃止検討路線の情報をくれたりするので、事業化する路線なのかどうか、担当の方と密にコミュニケーションを取る必要があります。
S:どのくらい減額して査定されるイメージなんですか?
横山:だいたい1〜2割というところでしょうか。計画の実現可能性と土地全体に占める道路予定地の割合に応じて付けていくイメージです。事業が決定されて土地が収用される、ということになれば、周辺の時価相場で買われることになるので、理論上は査定時の金額より高いお金が手に入る可能性はあります。
ただ、何千万も使って建てた家をまだ住める状態なのに壊さなきゃいけなくなるってかなりのリスクですよね。一度建てた家を取り壊す・新しい家を探して移らなければいけないリスクを考えると、流通性が低くなってしまうので、査定はそのくらいの減額にするケースが多いですね。
横山:また、都市計画道路予定地は建築の制限もあるんですよ。「簡単に壊せて明け渡しができる」という趣旨で、建築の自由度が下がってしまうのも減額リスクの要因ですね。都市計画法54条に53条の建築許可基準として「容易に移転し、又は除却することができるもの」と定義し、
と定められています。
S:計画決定の段階でもかなりの制限がかかるのですね。事業決定になるとどうなるのでしょうか?
横山:事業決定になると、道路の建設が始まりますので、基本的にはその土地に新たに建築をすることができません。ゆえに、事業決定後の道路予定地は原則として売却できないです。ただし道路予定地以外の部分は売却可能です。
また、土地の一部が都市計画道路予定地である場合、残りの土地は都市計画法53条・54条の適用を受けません。ただし土地全体ではなく、都市計画道路でない部分から建ぺい率と容積率の計算をして建築しなければいけないことに注意が必要です。
S:土地の大部分が計画決定段階の用地にかかっている時は建築の制限を受け、土地の一部がかかっている時は事業決定を見据えた建ぺい率・容積率で建築すると安全、ということですね。
横山:そうですね。まとめますと、少しでも土地に都市計画道路がかかっている時はその土地はさまざまなリスクがあり、流通性・処分性も低くなるので、査定価格は概ね低くなります。
そのようなことが後から判明しないように、不動産仲介業者は土地の査定をするときには必ず用途地域だけではなく、役所に出向いて都市計画道路の有無も調べるようにしてください。
S:ありがとうございました。冒頭でお話したうちの近所の土地、90%くらい計画予定が入っているので、買わないようにしよう・・