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③地域要因の数値化のロジック:AI査定プロの価格算定ロジックをシンプルに知りたい【鑑定士仲介マン横山が答える・不動産査定一問一答 No.3】

作成者: 編集部|2022/09/13 4:58:18

地域要因の数値化のロジック=補正率のバリエーションに細分化していく

S:一般的要因は公的な数値統計を使うことで、ある程度客観的に決まりそうですね。それに比べて、地域要因は客観的な数値統計がなかったり、「土地の格」みたいなものを数値化するので主観が入る要素が高そうに感じます。

横山:おっしゃる通りです。その主観的になりそうなところを客観的なロジック化していくのが、この仕事の肝であり、ロマンとも言えますね。

S:非常にそのロジックは興味深いですね・・

横山:こういったところが面白いところなので、解説していきますね。

S:はい!はじめに、地域要因を表現する補正率の全体像を教えてください。

横山:まず、地域補正率というものがあります。弊社では、それをさらに細分化して、

マンションは、

  • 所在補正率
  • 交通補正率

土地は、

  • 所在補正率
  • 交通補正率
  • 用途容積補正率

というものに分けていきます。

S:細かく分けることによって、なるべく客観的な数値になるような動きになりそうですね。一つ一つの解説をお願いします。

横山:マンション・土地の所在補正率は、町目ごとの補正値を決定します。一般的に流布している〇〇区のどこどこが高級住宅地、みたいな情報も反映します。やはりそういうところは土地もマンションも価格が高いので、その数値が自然に反映するんですよね。

S:確かに、不動産価格から算定していくと、その補正値の確からしさは増しますね。

横山:次に交通補正率ですが、これは駅距離ですね。弊社では徒歩20分までは1分ごとに補正率を変えています。やはり東京や大阪などの大都市は電車交通が主流なので、駅からの距離というのは価格を決定する大きなファクターになります。

土地単独の補正率は、用途地域や容積率が絡む

S:なるほど。徒歩15分を超えると、購入候補から外れてしまう場合も多いように感じるので腑に落ちますね。土地単独の補正要因はありますか?

横山:土地だと、所在や交通に加えて、用途容積補正率というものがあります。

用途地域というのは、

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域
  • 第一種住居地域
  • 第二種住居地域
  • 準住居地域

のように、住居の用途に応じて区分けされている都市計画法に基づく区分で、区分に応じた容積率が設定されています。

容積率とは、延床面積/敷地面積✖100を%で表現したもので、延床面積は、当該建物の階数ごとの床面積の合計です。

例えば、世田谷区成城5丁目8あたりだと、第一種低層住居専用地域で80%という容積率(2019年データ参照)になっていますので、このあたりの土地には敷地面積の80%の延床面積までの建物しか建てることができません。

これに対し、世田谷区成城2丁目25あたりは、第二種中高層住居専用地域で200%の容積率(2019年データ参照)になっていますので、より延床面積の大きい建物を建てることができます。

同じ面積の土地であれば、2階建しか建たない土地よりも3階建が建つ土地の方が良いですよね。したがって容積率が大きいほど価格が上がるのが原則です。

ただし、成城の例で言うと、容積率80%の地域は閑静な高級住宅地を形成しており、ゆったりとした街並みが魅力の地域です。このような場合、「容積率による影響」を「所在による影響」が上回ることがあります。

S:基本的には、「その土地をたくさんの床面積に活用できる方が、評価が高い」という理解で、番外的に「ゆったりとした街並みの魅力」を見ていくものなんですね。

土地の価値を大きく左右する「道路補正率」4つの指標

横山:これに加えて、土地の評価では道路補正率が重要になります。道路補正率は、

  • 接道状況(一方か角地か)
  • 方位
  • 幅員(建築基準との関係)
  • 種別(公道か私道か)

の基準でつけていきますね。

特に建築基準法では、敷地が幅員4m以上の道路に最低限2m以上接していなければ建物を建築することはできないので、4m未満の道路に接している場合、補正値をだいぶ下げています。

また、方位は南向きだと採光がしやすいので評価が高い傾向があります。

S:このあたりはわかりやすいですね。公道か私道かでも補正があるんですね。物理的な条件は一緒に感じますが。

横山:私道だと、管理面で色々ありましてね。例えば、下水道などインフラの埋設管の工事にも土地所有者の掘削承諾が必要だし、維持管理も私費になり老朽化のリスクが高いので、評価が低くなる傾向がありますね。

S:こうして見ていくと、所在・交通・道路・用途容積などの要素に分けることで、地域要因も概ね客観的な数値で価格を算出することが可能に感じました。今日もありがとうございました!

次回は、物件個別の補正はどのようにつけていくのか、という「個別補正率」のお話を聞かせてください!